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藤原相如
人しづまりてこといひたる女のもとへ待ちかねてとく罷りたりければかくやは云ひつるとていであはず侍りければいひ入れ侍りける
君をわが思ふ心は大原やいつしかとのみすみやかれつゝ
藤原道經
題志らず
我戀は逢初めてこそ増りけれしかまのかちの色ならね共
清原元輔
女のもとより曉かへりて立ち歸りいひつかはしける
夜を深み歸し空もなかりしをいづくよりおく露にぬれ劔
藤原顯廣朝臣
左京大夫顯輔の家にて歌合志侍りけるによめる
心をばとゞめてこそは歸りつれ怪しや何の暮をまつらむ
藤原實方朝臣
女のもとより夜ふかく歸りてあしたに遣はしける
竹の葉に玉ぬく露に非ね共まだ夜をこめておきにける哉
讀人志らず
長月の晦日の日のあしたに始めたる女のもとよりかへりて立ち歸りつかはしける
皆人の惜む日なれど我はたゞ遲く暮れゆく歎きをぞする
藤原範綱
左衛門督家成歌合志侍りけるによめる
住吉のあさ澤小野の忘水たえ%\ならであふよしもがな
和泉式部
藤原保昌の朝臣にぐして丹後國へまかりけるに忍びてものいひける男のもとへいひつかはしける
我のみや思ひおこせむ味氣なく人は行方もしらぬもの故
大江爲基
ものいひ侍りける女のもとへいひつかはしける
思ふ事なくて過ぎぬる世中につひに心をとゞめつるかな
一宮紀伊
夜がれせずまうで來ける男の秋立ちける日その夜しもまうでこざりければあしたにいひ遣はしける
常よりも露けかりける今宵かなこれや秋立つ始なるらむ
坂上明兼
女のもとにまかりたりけるに親のいさむれば今はえなむあふまじきといはせて侍りければよめる
せきとむる岩間の水も自から下には通ふものとこそきけ
惠慶法師
題志らず
逢事はまばらに編めるいよ簾いよ/\人を侘びさする哉
右大臣
等思兩人といふ事をよめる
いづく共よがるゝ事のわりなきに二に分くる我身ともがな
赤染衛門
をとこに忘られて歎きける頃八月ばかりにまへなる前栽の露をよもすがらながめてよめる
諸共におきゐる露のなかりせば誰とか秋のよを明さまし
曾禰好忠
題志らず
來たり共ぬるまもあらじ夏の夜の有明の月も傾ぶきに鳬
關白前太政大臣
新院くらゐにおはしましける時雖契不來戀といふ事をよませ給ひけるによみ侍りける
來ぬ人を恨みもはてじ契りおきし其言の葉も情ならずや
和泉式部
題志らず
夕暮にもの思ふ事は増るかと我ならざらむ人にとはゞや
月のあかゝりけるよまうで來たりける男の立ちながら歸りければあしたにいひ遣はしける
泪さへ出でにし方を眺めつゝ心にもあらぬ月を見しかな
讀人志らず
題志らず
つらしとて我さへ人を忘れなばさり迚中の絶や果つべき
平公誠
逢ふ事や泪の玉の緒なるらむ暫し絶ゆればおちて亂るゝ
最嚴法師
弟子なりけるわらはのおやにぐして人の國へあからさまにとてまかりけるが久しく見えざりければたよりにつけていひ遣はしける
み狩野の暫しの戀はさもあらばあれそり果ぬるか屋形尾の鷹
和泉式部
たのめたりける男をいまや/\と待ちけるにまへなる竹の葉に霰の降りかゝりけるを聞きてよめる
竹の葉に霰ふるよはさら/\に獨はぬべき心地こそせね
さがみ
程なく絶えにける男のもとへいひ遣はしける
ありふるも苦しかりけりながゝらぬ人の心を命ともがな
清原元輔
かよひける女のこと人に物いふときゝていひ遣はしける
うきながらさすがにものゝ悲しきは今は限と思ふ
なりけり
俊子内親王大進
久しく音せぬ男につかはしける
とはぬ間をうら紫に咲く藤の何とて松にかゝりそめけむ
高階章行朝臣女
男の絶々になりける頃いかにと問ひたる人の返事によめる
思ひやれ筧の水のたえ%\になりゆくほどの心ぼそさを
律師仁祐
いとほしく侍りけるわらはの大僧正行尊が許へまかりにければいひ遣はしける
鶯は木づたふ花の枝にても谷のふるすをおもひわするな
大僧正行尊
返事、わらはにかはりて
うぐひすは花の都も旅なれば谷の古巣をわすれやはする
皇嘉門院出雲
左衛門督家成長月の晦日頃にはじめていひそめていかなる事かありけむ、絶えて音づれ侍らざりけるが其冬ごろ、聞くことのあればはゞかりてえなむいはぬといはせて侍りける返事によめる
夜を重ね霜と共にし置きぬればありし計の夢をだに見ず
中納言國信 家に歌合志侍りけるに逢うて遇はぬ戀といふことをよめる
あふこともわが心よりありしかば戀は死ぬとも人は恨みじ
藤原仲實朝臣
汲み見てし心一つを志るべにて野中の清水忘れやはする
藤原基俊
關白前太政大臣の家にてよめる
淺ぢふにけさおく露の寒けくに枯にし人のなぞや戀しき
清少納言
心かはりたる男にいひつかはしける
忘らるゝ身はことわりと知り乍思ひあへぬは泪なりけり
讀人志らず
久しく音せぬ男にいひ遣はしける
[1]とへともいはじ我ぞ唯人を忘るゝことを知るべき
讀人志らず
中納言通俊絶え侍りければ云ひつかはしける
さりとては誰にかいはむ今は唯人を忘るゝこゝろ教へよ
中納言通俊
返し
まだ知ぬ事をば如何が教ふべき人を忘るゝ身にし非ねば
和泉式部
おなじ所なる男のかきたえにければよめる
幾返りつらしと人をみ熊野の恨めしながら戀しかるらむ
さがみ
大江公資にわすれられてよめる
夕暮はまたれしものを今は唯行くらむ方を思ひこそやれ
讀人志らず
題志らず
忘らるゝひとめ計を歎きにて戀しき事のなからましかば
[1] Shinpen kokka taikan (Tokyo: Kadokawa Shoten, 1983, vol. 1; hereafter cited as SKT) reads とへどもいはじ.
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