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皇太后宮大夫俊成女
五十首哥たてまつりしに、寄雲恋
したもえにおもひきえなんけぶりだにあとなき雲のはてぞかなしき
藤原定家朝臣
摂政太政大臣家百首哥合に
なびかじなあまのもしほびたきそめてけぶりはそらにくゆりわぶとも
摂政太政大臣
百首哥たてまつりし時
こひをのみすまのうら人もしほたれほしあへぬ袖のはてをしらばや
二条院讃岐
恋哥とてよめる
みるめこそいりぬるいその草ならめ袖さへなみのしたにくちぬる
俊頼朝臣
としをへたるこひといへる心をよみ侍ける
君こふとなるみのうらのはまひさぎしほれてのみもとしをふるかな
前太政大臣
忍恋のこゝろを
しるらめや木の葉ふりしくたに水のいはまにもらすしたの心を
摂政太政大臣
左大将に侍ける時、家に百首哥合し侍けるに、忍恋の心を
もらすなよ雲ゐるみねのはつ時雨この葉はしたにいろかはるとも
後徳大寺左大臣
恋哥あまたよみ侍けるに
かくとだにおもふ心をいはせ山したゆく水の草がくれつゝ
殷富門院大輔
もらさばやおもふ心をさてのみはえぞ山しろの井でのしがらみ
近衛院御哥
忍恋の心を
こひしともいはゞこゝろのゆくべきにくるしや人めつゝむおもひは
花園左大臣
見れどあはぬこひといふ心をよみ侍ける
人しれぬこひにわが身はしづめどもみるめにうくは涙なりけり\
神祇伯顕仲
題しらず
ものおもふといはぬばかりはしのぶともいかゞはすべき袖のしづくを
清輔朝臣
忍恋の心を
人しれずくるしき物はしのぶ山したはふくずのうらみなりけり
雅経
和哥所哥合に、忍恋の心を
きえねたゞしのぶの山のみねの雲かゝる心のあともなきまで
左衛門督通光
千五百番哥合に
かぎりあればしのぶの山のふもとにもおち葉がうへのつゆぞいろづく
二条院讃岐
うちはへてくるしきものは人めのみしのぶの浦のあまのたくなは
春宮権大夫公継
和哥所哥合に、依忍増恋といふことを
しのばじよいしまづたひのたにがはもせをせくにこそ水まさりけれ\
信濃
題しらず
人もまだふみゝぬ山のいはがくれながるゝ水を袖にせくかな
西行法師
はるかなるいはのはざまにひとりゐて人めおもはで物おもはゞや
かずならぬ心のとがになしはてじしらせてこそは身をもうらみめ
摂政太政大臣
水無瀬の恋十五首哥合に、夏恋を
草ふかきなつ野わけゆくさをしかのねをこそたてねつゆぞこぼるゝ
太宰大弐重家
入道前関白右大臣に侍ける時、百首哥人びとによませ侍けるに、忍恋の心を
のちのよをなげく涙といひなしてしぼりやせましすみぞめの袖
よみ人しらず
大納言成通ふみつかはしけれどつれなかりける女を、のちのよまでうらみのこるべきよし申ければ
たまづさのかよふばかりになぐさめて後のよまでのうらみのこすな
前大納言隆房中将に侍ける時、右近馬場のひをりの日まかれりけるに、ものみ侍ける女、車よりつかはしける
ためしあればながめはそれとしりながらおぼつかなきは心なりけり
前大納言隆房
返し
いはぬより心やゆきてしるべするながむるかたを人のとふまで
左衛門督通光
千五百番哥合に
ながめわびそれとはなしに物ぞおもふ雲のはたての夕ぐれの空
皇太后宮大夫俊成
あめふる日、女につかはしける
おもひあまりそなたのそらをながむればかすみをわけて春雨ぞふる
摂政太政大臣
水無瀬恋十五首哥合に
山がつのあさのさ衣おさをあらみあはで月日やすぎふけるいほ
藤原忠定
欲言出恋といへる心を
おもへどもいはで月日はすぎのかどさすがにいかゞしのびはつべき
皇太后宮大夫俊成
百首哥たてまつりし時
あふことはかた野の里のさゝのいほしのに露ちるよはのとこかな
入道前関白右大臣に侍ける時、百首哥の中にしのぶるこひ
ちらすなよしのゝ葉ぐさのかりにてもつゆかゝるべき袖のうへかは
藤原元真
題しらず
白玉かつゆかとゝはん人もがなものおもふ袖をさしてこたへん
藤原義孝
女につかはしける
いつまでもいのちもしらぬ世中につらきなげきのやまずもあるかな
大炊御門右大臣
崇徳院に百首哥たてまつりける時
わがこひはちぎのかたそぎかたくのみゆきあはでとしのつもりぬるかな
藤原基輔朝臣
入道前関白家に百首哥よみ侍ける時、あはぬこひといふ心を
いつとなくしほやくあまのとまびさしひさしくなりぬあはぬ思は\
藤原秀能
夕恋といふ事をよみ侍ける
もしほやくあまのいそやのゆふけぶりたつなもくるし思たえなで
定家朝臣
海辺恋といふことをよめる
すまのあまの袖にふきこすしほ風のなるとはすれどてにもたまらず
寂蓮法師
摂政太政大臣家哥合によみ侍ける
ありとてもあはぬためしのなとりがはくちだにはてねせゞのむもれ木
摂政太政大臣
千五百番哥合に
なげかずよいまはたおなじなとりがはせゞのむもれ木くちはてぬとも
二条院讃岐
百首哥たてまつりし時
なみだがはたぎつ心のはやきせをしがらみかけてせく袖ぞなき
高松院右衛門佐
摂政太政大臣百首哥よませ侍けるに
よそながらあやしとだにもおもへかしこひせぬ人の袖のいろかは
よみ人しらず
恋哥とてよめる
しのびあまりおつる涙をせきかへしをさふる袖ようきなもらすな
道因法師
入道前関白太政大臣家哥合に
くれなゐに涙のいろのなりゆくをいくしほまでと君にとはゞや
式子内親王
百首哥中に
夢にても見ゆらんものをなげきつゝうちぬるよゐの袖のけしきは
後徳大寺左大臣
かたらひ侍ける女の夢に見えて侍ければよみける
さめてのち夢なりけりとおもふにもあふはなごりのをしくやはあらぬ
摂政太政大臣
千五百番哥合に
身にそへるそのおもかげのきえなゝん夢なりけりとわするばかりに
大納言実宗
題しらず
夢のうちにあふとみえつるねざめこそつれなきよりも袖はぬれけれ\
前大納言忠良
五十首哥たてまつりしに
たのめをきしあさぢがつゆに秋かけてこの葉ふりしくやどのかよひぢ
正三位経家
隔河忍恋といふことを
しのびあまりあまのかはせにことよせんせめては秋をわすれだにすな\
賀茂重政
とをきさかひをまつこひといへる心を
たのめてもはるけかるべきかへる山いくへの雲のうちにまつらん\
中宮大夫家房
摂政太政大臣家百首哥合に
あふことはいつといぶきのみねにおふるさしもたえせぬ思なりけり
家隆朝臣
ふじのねのけぶりもなをぞたちのぼるうへなきものはおもひなりけり
権中納言俊忠
名立恋といふこゝろをよみ侍ける
なき名のみたつたの山にたつ雲のゆくゑもしらぬながめをぞする
惟明親王
百首哥の中に恋の心を
あふことのむなしきそらのうき雲は身をしる雨のたよりなりけり\
右衛門督通具
わがこひはあふをかぎりのたのみだにゆくゑもしらぬそらのうき雲
皇太后宮大夫俊成女
水無瀬恋十五首哥合に、春恋の心を
おもかげのかすめる月ぞやどりける春やむかしの袖のなみだに
定家朝臣
冬恋
とこのしもまくらの氷きえわびぬむすびもをかぬ人の契に
有家朝臣
摂政太政大臣家百首哥合に、暁恋
つれなさのたぐひまでやはつらからぬ月をもめでじありあけの空
藤原秀能
宇治にて、夜恋といふことを、ゝのこどもつかうまつりしに
袖のうへにたれゆへ月はやどるぞとよそになしても人のとへかし
越前
ひさしきこひといへることを
夏引のてびきのいとのとしへてもたえぬ思にむすぼゝれつゝ
摂政太政大臣
家に百首哥合し侍けるに、祈恋といへる心を
いく夜われ浪にしほれてきぶねがはそでに玉ちる物おもふらん
定家朝臣
としもへぬいのる契ははつせ山おのへのかねのよその夕ぐれ
皇太后宮大夫俊成
かたおもひの心をよめる
うき身をばわれだにいとふいとへたゞそをだにおなじ心とおもはん
権中納言長方
題しらず
こひしなんおなじうき名をいかにしてあふにかへつと人にいはれん\
殷富門院大輔
あすしらぬいのちをぞおもふをのづからあらばあふよをまつにつけても
八条院高倉
つれもなき人の心はうつせみのむなしきこひに身をやかへてん
西行法師
なにとなくさすがにおしきいのちかなありへば人や思しるとて
おもひしる人ありけりのよなりせばつきせず身をばうらみざらまし
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