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河島皇子
朱鳥五年九月、紀伊国に行幸時
白なみのはま松がえのたむけぐさいくよまでにかとしのへぬらん
式部卿宇合
題しらず
山しろのいは田のをのゝはゝそはら見つゝや君が山ぢこゆらん
在原業平朝臣
あしのやのなだのしほやきいとまなみつげのをぐしもさゝずきにけり
はるゝよのはしかゝはべの蛍かもわがすむかたのあまのたくひか
よみ人しらず
しかのあまのしほやくけぶり風をいたみたちはのぼらで山にたなびく
貫之
なにはめの衣ほすとてかりてたくあしびのけぶりたゝぬ日ぞなき
忠岑
ながらのはしをよみ侍ける
としふればくちこそまされはしばしらむかしながらの名だにかはらで
恵慶法師
春の日のながらのはまに舟とめていづれかはしとゝへどこたへぬ
後徳大寺左大臣
くちにけるながらのはしをきてみればあしのかれ葉に秋風ぞ吹
権中納言定頼
題しらず
おきつ風よはにふくらしなにはがたあか月かけてなみぞよすなる
藤原孝善
春、すまの方にまかりてよめる
すまの浦のなぎたるあさはめもはるにかすみにまがふあまのつり舟\
壬生忠見
天暦御時屏風哥
秋風のせきふきこゆるたびごとに声うちそふるすまのうら浪
前大僧正慈円
五十首哥よみてたてまつりしに
すまの関夢をとおさぬなみのをとをおもひもよらでやどをかりける
摂政太政大臣
和哥所哥合に、関路秋風といふことを
人すまぬふわのせきやのいたびさしあれにしのちはたゞ秋の風
俊頼朝臣
明石浦をよめる
あまを舟とまふきかへす浦風にひとりあかしの月をこそ見れ
寂蓮法師
眺望のこゝろをよめる
わかのうらを松の葉ごしにながむればこずゑによするあまのつり舟
正三位季能
千五百番哥合に
みづのえのよしのゝ宮は神さびてよはひたけたる浦の松風\
藤原秀能
海辺のこゝろを
いまさらにすみうしとてもいかゞせんなだのしほやのゆふぐれの空
貫之 題しらず [入拾遺集之由、権中納言源朝臣申之]
いくよへしいそべの松ぞむかしよりたちよるなみのかずはしるらん
女御徽子女王
むすめの斎王にぐしてくだり侍て、おほよどのうらにみそぎし侍とて
おほよどのうらにたつなみかへらずは松のかはらぬいろをみましや
後冷泉院御哥
大弐三位さとにいで侍りにけるをきこしめして
まつ人は心ゆくともすみよしのさとにとのみはおもはざらなん
大弐三位
御返し
すみよしの松はまつともおもほえで君がちとせのかげぞこひしき
祝部成仲
教長教、名所哥よませ侍けるに
うちよする浪のこゑにてしるきかなふきあげのはまの秋のはつ風
越前
百首哥たてまつりし時、海辺哥
おきつかぜ夜さむになれやたごのうらのあまのもしほ火たきまさるらん\
家隆朝臣
海辺霞といへる心をよみ侍し
見わたせばかすみのうちもかすみけりけぶりたなびくしほがまのうら
皇太后宮大夫俊成
太神宮にたてまつりける百首哥のなかに、わかなをよめる
けふとてやいそなつむらんいせしまやいちしのうらのあまのをとめご
西行法師
伊勢にまかりける時よめる
すゞか山うきよをよそにふりすてゝいかになりゆくわが身なるらん
前大僧正慈円
題しらず
世中をこゝろたかくもいとふかなふじのけぶりを身のおもひにて
西行法師
あづまのかたへ修行し侍けるに、ふじの山をよめる
風になびくふじのけぶりのそらにきえてゆくゑもしらぬわが思哉
業平朝臣
さ月のつごもりに、ふじの山のゆきしろくふれるを見てよみ侍ける
時しらぬ山はふじのねいつとてかかのこまだらに雪のふるらん\
在原元方
題しらず
春秋もしらぬときはの山ざとはすむ人さへやおもがはりせぬ
前大僧正慈円
五十首哥たてまつりし時
花ならでたゞしばのとをさして思こゝろのおくもみよしのゝ山
西行法師
だいしらず
よしの山やがていでじとおもふ身を花ちりなばと人やまつらん
藤原家衡朝臣
いとひてもなをいとはしきよなりけりよしのゝおくの秋の夕ぐれ
右衛門督通具
千五百番哥合に
ひとすぢになれなばさてもすぎのいほによなよなかはる風のをとかな
有家朝臣
守覚法親王五十首哥よませ侍けるに、閑居のこゝろをよめる
たれかはとおもひたえてもまつにのみをとづれてゆく風はうらめし\
宜秋門院丹後
鳥羽にて哥合し侍りしに、山家嵐といふことを
山ざとはよのうきよりはすみわびぬことのほかなる峰の嵐に
家隆朝臣
百首哥たてまつりしに
滝のをと松のあらしもなれぬればうちぬるほどの夢はみせけり
寂然法師
題しらず
ことしげきよをのがれにしみ山べにあらしの風も心してふけ
権大納言師氏
少将高光、横河にまかりてかしらおろし侍にけるに、法服つかはすとて
おく山のこけの衣にくらべ見よいづれかつゆのをきまさるとも
如覚
返し
白つゆのあしたゆふべにおく山のこけの衣は風もさはらず
読人しらず
能宣朝臣、大原野にまうでゝ侍りけるに、山ざとのいとあやしきに、すむべくもあらぬさまなる人の侍りければ、いづくわたりよりすむぞなどゝひ侍ければ
世中をそむきにとてはこしかどもなをうきことはおほはらのさと
能宣朝臣
返し
身をばかつをしほの山とおもひつゝいかにさだめて人のいりけん\
恵慶法師
ふかき山にすみ侍けるひじりのもとにたづねまかりたりけるに、いほりのとをとぢて人も侍らざりければ、かへるとてかきつけゝる
こけのいほりさしてきつれど君まさでかへるみ山のみちのつゆけさ
ひじりのちに見て、返し
あれはてゝ風もさはらぬこけのいほにわれはなくともつゆはもりけん
西行法師
題しらず
山ふかくさこそ心はかよふともすまであはれをしらんものかは
やまかげにすまぬこゝろはいかなれやおしまれている月もあるよに\
寂蓮法師
山家送年といへる心をよみ侍ける
たちいでゝつま木おりこしかたをかのふかき山ぢとなりにけるかな
太上天皇
住吉哥合に、山を
おく山のをどろがしたもふみわけてみちあるよぞと人にしらせん
二条院讃岐
百首哥たてまつりし時
ながらへて猶きみがよを松山のまつとせしまにとしぞへにける
皇太后宮大夫俊成
山家松といふことを
いまはとてつま木こるべきやどの松ちよをば君と猶いのる哉
有家朝臣
春日哥合に、松風といへる事を
われながらおもふかものをとばかりに袖にしぐるゝ庭の松風
道命法師
山でらに侍りけるころ
世をそむこところとかきくおく山はものおもひにぞいるべかりける
和泉式部
少将井の尼、大原よりいでたりときゝてつかはしける
世をそむくかたはいづくにありぬべしおほはら山はすみよかりきや
少将井尼
返し
おもふことおほはら山のすみがまはいとゞなげきのかずをこそつめ
西行法師
題しらず
たれすみて哀しるらん山ざとの雨ふりすさむゆふぐれの空
しほりせでなを山ふかくわけいらんうきこときかぬ所ありやと
殷富門院大輔
かざしおるみわのしげ山かきわけてあはれとぞおもふすぎたてるかど
道命法師
法輪寺にすみ侍けるに、人のまうできて、くれぬとていそぎ侍ければ
いつとなきをぐらの山のかげをみてくれぬと人のいそぐなる哉
定家朝臣
後白河院栖霞寺におはしましけるに、こまひきのひきわけのつかひにてまいりけるに
さがの山ちよのふるみちあとゝめてまたつゆわくるもち月のこま\
知足院入道前関白太政大臣
なげくこと侍けるころ
さほがはのながれひさしき身なれどもうきせにあひてしづみぬる哉
東三条入道前摂政太政大臣
冬ごろ、大将はなれてなげく事侍りけるあくるとし、右大臣になりて奏し侍ける
かゝるせもありけるものをうぢがはのたえぬばかりもなげきけるかな
円融院御哥
御返し
むかしよりたえせぬ河のすゑなればよどむばかりをなになげくらん
人麿
題しらず
ものゝふのやそ氏がはのあじろ木にいざよふ浪のゆくゑしらずも
中納言行平
ぬのびきのたき見にまかりて
わがよをばけふかあすかとまつかひのなみだの滝といづれたかけん
二条関白内大臣
京極前太政大臣、ぬのびきのたき見にまかりて侍けるに
みなかみのそらにみゆるは白雲のたつにまがへるぬのびきの滝
有家朝臣
最勝四天王院の障子に、ぬのびきのたきかきたる所
ひさかたのあまつをとめが夏衣くも井にさらすぬのびきのたき
摂政太政大臣
あまのかはらをすぐとて
むかしきくあまのかはらをたづねきてあとなきみづをながむばかりぞ\
実方朝臣
題しらず
あまのがはかよふうきゝにことゝはんもみぢのはしはちるやちらずや
前中納言匡房
堀河院御時百首哥たてまつりけるに
ま木のいたもこけむすばかりなりにけりいくよへぬらんせたのながはし
中務
天暦御時、屏風にくにぐにの所の名をかゝせさせ給けるに、あすかゞは
さだめなき名にはたてれどあすかゞははやくわたりしせにこそ有けれ
前大僧正慈円
題しらず
山ざとにひとりながめておもふかなよにすむ人の心づよさを\
西行法師
やまざとにうきよいとはんともゝがなくやしくすぎし昔かたらん
山ざとは人こさせじとおもはねどとはるゝことぞうとくなりゆく\
前大僧正慈円
草のいほをいとひても又いかゞせんつゆのいのちのかゝるかぎりは
大僧正行尊
みやこをいでゝひさしく修行し侍けるに、とふべき人のとはず侍ければ、くまのよりつかはしける
わくらばになどかは人のとはざらんをとなし河にすむ身なりとも
安法々師
あひしれりける人のくまのにこもり侍けるにつかはしける
世をそむく山のみなみの松風にこけのころもやよさむなるらん
家隆朝臣
西行法師、百首哥すゝめてよませ侍けるに
いつかわれこけのたもとにつゆをきてしらぬ山ぢの月をみるべき\
式子内親王
百首哥たてまつりしに、山家の心を
いまはわれ松のはしらのすぎのいほにとづべき物をこけふかき袖
小侍従
しきみつむ山ぢのつゆにぬれにけり暁おきのすみ染のそで
摂政太政大臣
わすれじの人だにとはぬ山ぢかな桜は雪にふりかはれども
雅経
五十首哥たてまつりし時
かげやどすつゆのみしげくなりはてゝ草にやつるゝふるさとの月\
賀茂重保
俊恵法師身まかりてのち、としごろつかはしけるたきゞなど、弟子どものもとにつかはすとて
けぶりたえてやく人もなきすみがまのあとのなげきをたれかこるらん
西日法師
老後、つのくになる山でらにまかりこもりけるに、寂蓮たづねまかりて侍けるに、いほりのさますみあらしてあはれにみえ侍けるを、かへりてのちとぶらひて侍ければ
やそぢあまりにしのむかへをまちかねてすみあらしたるしばのいほりぞ
前大僧正慈円
山家哥あまたよみ侍けるに
山ざとにとひくる人のことくさはこのすまゐこそうらやましけれ\
式子内親王
後白河院かくれさせ給てのち、百首哥に
おのゝえのくちしむかしはとをけれどありしにもあらぬよをもふる哉
皇太后宮大夫俊成
述懐百首哥よみ侍けるに
いかにせんしづがそのふのおくのたけかきこもるとも世中ぞかし
祝部成仲
おいのゝち、むかしを思いで侍りて
あけくれはかしをのみぞしのぶぐさ葉ずゑのつゆに袖ぬらしつゝ
前大僧正慈円
題しらず
をかの辺のさとのあるじをたづぬれば人はこたへず山をろしの風
西行法師
ふるはたのそばのたつきにゐるはとのともよぶ声のすごきゆふぐれ
山がつのかたをかゝけてしむる野のさかひにたてる玉のを柳
しげきのをいくひとむらにわけなしてさらにむかしをしのびかへさん
むかし見し庭のこ松にとしふりて嵐のをとをこずゑにぞきく
大僧正行尊
三井寺やけてのち、すみ侍ける房をおもひやりてよめる
すみなれしわがふるさとはこのごろやあさぢがはらにうづらなくらん
摂政太政大臣
百首哥よみ侍けるに
ふるさとはあさぢがすゑになりはてゝ月にのこれる人のおもかげ
西行法師
これや見しむかしすみけんあとならんよもぎがつゆに月のかゝれる
貫之
人のもとにまかりて、これかれ松のかげにおりゐてあそびけるに
かげにとてたちかくるればから衣ぬれぬ雨ふる松のこゑかな\
能因法師
西院辺にはやうあひしれりける人をたづね侍けるに、すみれつみけるをんな、しらぬよし申ければ、よみ侍ける
いそのかみふりにし人をたづぬればあれたるやどにすみれつみけり\
恵慶法師
ぬしなきやどを
いにしへをおもひやりてぞこひわたるあれたるやどのこけのいしばし
定家朝臣
守覚法親王五十首哥よませ侍けるに、閑居の心を
わくらばにとはれし人もむかしにてそれより庭のあとはたえにき
赤染衛門
ものへまかりけるみちに、やま人あまたあへりけるを見て
なげきこる身は山ながらすぐせかしうきよの中になにかへるらん\
人麿
秋さればかり人こゆるたつた山たちてもゐてもゝのをしぞおもふ
天智天皇御哥
あさくらやきのまろどのにわがをればなのりをしつゝゆくはたがこぞ\
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